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兵卒物語 07)エダム

2011.04.07 15:15|小説 『兵卒物語』


気を失ってくれて助かった。
溺れている人を助けるのは、本当に骨が折れる。
ジェイが池で溺れた時もそうだった。あの時はジンと二人掛かりで引き揚げたっけ。

背後で水音がふたつ。
下っ端が追いかけてきたのか。
急いでギーズを対岸の岩陰に引き上げ、飲んだ水を吐き出させる。
「げほっげほっ…ばかや…ろう!援けるのは…俺じゃねぇだろ!」
「…ギーズさん、僕はね」背中に装着していた槍を外し、構える。

「もう目の前で、仲間が死ぬところを見たくないんです」…静かに言い放つ。

「…ふん、ガキが…あめえんだよ! 婆ぁと嬢ちゃんが大変なことになってるぜ」
「あの方は大丈夫です」僕の記憶に間違いがなければ…
「なに?なに自信満々なんだよ?」いぶかしげにギーズが聞いてくるが、無視する。

あの方たちは、山賊ごときにやられない。
僕たちが近くにいた方が、力を発揮できないだろう。だから離れた。

昨日の夜更け、僕は聞いてしまった。オルダさんと姫の会話を。
となると、姫は誰?って夜中ずっと考えていた。あの、ガズー様が連れていた子が
姫じゃなくこの子で、この子と姫が同一人物じゃないとしたら…
たまにガズー様に内緒で、僕たち3人にいろんな魔法を見せてくれたあの子なら…
姫様は魔導師?いやそうじゃなくて、姫様じゃなくて魔導師?…

僕は自分の中のジンと対話して、いろんな可能性を構築しては消していき、ある結論に達した。

この子は姫の影武者。
そして大魔導師ガズー様の弟子。
オルダは知っている。
ギーズは知らない。
僕(エダム)にも知られていないと思っている。
男2人にはできるかぎり知られたくない。
あの子とオルダはあと2週間は逃避行を続けるつもりでいる。

そして…敵の面前で死のうとしている。

昔の自分だったら絶対思いつかない。僕の頭の中のジンがヒントをくれて導きだした答え。
でも、それほど間違っているとは思わない。

そして僕はこれからどうしたらいい?
ジンならどうしてた?ジェイならどうしてた?僕たち3人は最後になんと言っていた?
そのあたりまで考えてて、睡魔の波に呑み込まれてしまった。

そして山賊の出現。

僕の中のジェイは姫から離れるなという。
僕の中のジンは姫から離れろという。
「今ならまだ大丈夫。こんなとこで山賊ごときにやられるわけがない」自信満々のジン
「でも俺たちが姫様の盾にならなきゃ。」心やさしい素直なジェイ
「俺たちがいたら、魔法を使いづらい。レディーの嗜みってやつさ」結局ジンの言葉で
僕は、馬車から離れても仕方ないって思っていた。心配だけどそれが一番いい方法なら
従うまでだ。

そういう流れで僕は川に飛び込んだ。

ギーズさんはまだ怒ってる。この人って、お金第一で冷たいイメージだと思ってたけど
なんだかちょっと違うようだ。そのことをコソッと言ってみる。
「ば、馬鹿野郎。スポンサーに死なれたら、金が入ってこないだろうが!」
と凄んだ裏で、「おめぇ、よそで俺が本当は優しいだのなんだのって、言ったら…」下っ端が
斬りかかってきたのをいなし、剣を奪う。「殺すからな」
「わかってますよ。大丈夫。評判を落とすようなことは言いません」僕はギーズさんの機嫌を
取りながら、聞耳を立てる。ほんの一瞬のうちに、こちらに追いかけてきた下っ端2人を
片づけた。本当にギーズさんは強い。そしてあの体術使いもまた、強い。

やがて、対岸から伝わってきた空気の振動が肌に響く。ピリピリする。
そして爆発!魔法特有の圧力の高い空気の塊みたいなのが飛散する。
よかった。ギーズは気づいてない。魔法に疎いようだ。だが遅れてきた音には即座に反応した。
「なんだぁ、婆さん爆弾でも持ってたか?」
「みたいですね。音の爆弾のようです」調子を合わせる。

対岸に戻ると、山賊たちはみな耳を押さえてうずくまっている。音の魔法だろう。小さい時
あの子が得意だった魔法。どんなに鍛えていても、あれを耳元でやられるとしばらく動けない。
やられた本人の保証付き。カエルを鞄に入れた仕返しにやられた思い出が蘇る。軽くやられただけ
なのにジンだけは半日動けなかった。
この大きさだと鼓膜は破れているかもしれない。あの体術使いなど逆に感覚にすぐれている人間への、
ダメージは倍加する。かわいそうだが数日はまともに歩けないだろう。

「ふん、無事だったか」オルダさんが気のないそぶりで言う。
「そりゃぁこっちのセリフだ。音の爆弾なんてもってるんなら最初から言っといてくれよ」
ギーズさんが文句を言う。
「護身用兵器はたくさんあるさ。なにせ狼どもと旅をするんじゃからな」
「おそわねぇよ」突っ込むギーズさん。

「さぁ、はやくこの場所から離れましょう」
何事もなかったように僕は言い、僕たちの姫様に目配せをした。

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