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兵卒物語 05)オルダ

2011.04.07 15:13|小説 『兵卒物語』


お城に敵兵が攻め込んできて、王宮が騒然となっていた時、私は大魔導師ガズー様から
この話を相談され、二つ返事で承諾したのでございます。
もちろん、ガズー様は老い先短い私の活用法と、これからの本物の姫の強行突破において、
私が足手まといになることを考慮して、本隊同行からは外されたわけではあるのですが、
何よりこの配役は、私以外にこなせそうにありません。

ドリィをより姫らしくし、また姫として恥ずかしくないように散らしめるのは、この
先々代王より仕え、女官歴四半世紀を超える私オルダの天命として承りました。

準備された商人用の馬車に乗り込み、ドリィの着替えを手伝います。絹の服から木綿の質素なものへ
貴金属はすべて取り払い、座席下の金庫に仕舞う。ギーズが馬を操り、エダムは後ろの荷台の
中や、ギーズの隣、馬車の中と、状況に合わせて移動する。
この森の間道をぬけ、山を3つ越えたところに最初の目的地エルフの森があるのですが、そこに
辿り着くまでに大きな街を2つ通過しなければなりません。もちろん平時は私たちの王国の統轄下
にある街なのですが、今ははたしてどういう状況なのかもわかりません。

一番困るのは、あっという間に殺されるか捕えられることで、一番理想的なのは、宿屋にいる
状況で周りを敵兵に囲まれることでございます。ドリィの魔法は死んだら解けてしまいます。
つまり顔が元に戻ってしまうのです。ドリィもそのあたりを危惧して、常に火炎壺と爆弾を
身につけ死体の顔をきれいに残さないように心がけております。ですから、囲まれて火による
自害という筋書きが、一番あやしまれないと考えております。もし、ドリィが自害する前に
命を絶たれるようなことがあれば、私オルダがその身をもってドリィの顔を破壊する所存で
ございます。

そうすることによって、いつかは事実が判明するでしょうが、それ迄のしばらくの間、時間を
稼げるのです。またそれがガズー様の仕掛けたある魔法の発動の鍵となるのです。

これが戦乱の世に生を受けた女の使命でございます。兵卒の使命でございます。

そしてこの一行でやはり一番心配なのは、名もなき盗賊に襲われることでございます。
その為に上納品としての金品は用意してはおりますが、やはりギーズとエダムがどこまで
期待する働きができるのかが全くの未知数ですから。とくにギーズは雇ってまだ日も浅く、
どことなく危険な雰囲気をもっており、それがまた信用のできない一因でもあるのでございます。

森を抜けるとあとは街道沿いに進むので、野盗、盗賊の類を心配する必要がほぼなくなります。
ですので最初の街まで辿り着いたら、ギーズは契約解除したほうがよいような気がします。

ともかく森を抜けるまであと3日ほど掛かるので、まずその工程を乗り切らねばなりません。
まだ痕跡や足跡をそれほど残していない状態で、敵兵ならともかく、野盗ごとにき命を奪われる
ことになったら、この囮逃避行の意味がほとんどなくなってしまいます。出来るだけ長く遠くに
逃げて、その上で敵に発見され自害するというのが、このオルダの筋書きなのです。

我が守護神エルドュプスよ、それまで我と我が一行を守りたまえ…
エルドュプスは料理の神ではございますが、この際すこし融通を効かせていただきましょう。

ともかくガズー様からお聞きした予定の日までには、あと最低2週間は生き延びねばなりません。

「おい婆さん、そろそろあったけ~飯が喰いていんだがよ」ギーズがガナリ立てる。
「ふむ」そろそろ日が沈む。夜移動する手も準備はしてるのですが、この面子ではかえって
危険度が増すように思います。
「では、野宿できそうな場所を探しなさい」

しばらくして森の中に泉を見つけ、横に少し開けた場所があったので、そこで小さな火を起こした。
泉で汲んだ水を持ってきた鍋に入れ火にかける。
どんな時でも私はまずお湯を沸かす。その間にいろいろと考える。それが習慣なのです。
食材はたいしたものがない。乾燥させた鹿肉、木の実、偽装のために積んでいる玉ねぎ、杏ジャム、
バター、チーズ、赤ワイン、干した茸類、小麦粉。ただしスバイスはかなりの種類と量を持ってきた。
薬としても使うためだが、少しくらい使ってもかまわないだろう。
そうだ、ちょっとスパイシーな鹿肉のシチューを作ろう。疲れた神経をほぐすにはいいかも知れない。

「おおっいい匂いじゃねえか。婆さん、あんたやるな。ただもんじゃねえな」偵察から帰ってきた
ギーズが子供のようにはしゃぐのが少しおかしい。

「今頃気がついた?婆やは王国厨房のご意見番オルドゥプスなの」姫(ドリィ)が持ち上げる。

「いやホントにおいしいです。オルダさん。こんなにおいしい料理は生まれて初めてかもしれない」
エダムがうっすら涙をためながらシチューを啜る。

この感じは…まぁ悪くはないわね。

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