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兵卒物語 04)ドリィ

2011.04.07 15:12|小説 『兵卒物語』


信じられなかった。
3人と笑って再会できると思っていた。
特にジン、あなたにはたくさんお話したいことがあった。
私の素姓のこと。これからのこと。ジンならチカラになってくれると信じていた。

どうしよう。どうしたらいいんだろう。
この不安をエダムに悟られないように、ちょっと怒った口調になってしまった。
エダム。3人の中で一番優柔不断で、体も小さく、体力もない。
でもこの子は生き残った。それが重要なんだ。そう思うことにした。

私の本当の名前はドリィ。…姫じゃない。
父も母も知らない。物心ついたときには大魔導師ガズー様に育てられていた。この人が
母親だと思えたらどれだけ幸せだっただろう。だがそうではなく、最初から私たちは
師と弟子だった。

私の唯一といっていい子供のころの楽しい思い出は、城の施設であの3人と遊んだ
日々だった。あのガズー様がそんなことを許してくれるとは思ってもいなかった。
お菓子を両腕いっぱいに抱えた彼女のそういう一面は、本当の姿なのか、仮の姿なのか
判断に苦しんだ。最初は警戒してなかなか遊べなかったけど、今こうして手を引っぱって
いるエダムが、その時は私の手を引っぱって、みんなのもとへ連れていってくれた。

んふっ。生真面目なジェイにラブレターの書き方を教えたのは私だ。
私の下書きを参考にしたらって言ったのに、そのまま写して裁縫屋のあの子に渡したんだ。
でも名前のところはちゃんとあの子の名前にしなきゃ。下書きの名前はジンだったのに。
あれは私がジンに宛てたラブレターだったのに。ちょっと抜けてるジェイはそのまま
書いちゃったんだね。

ジン。あなたは私を、魔法の修行しかしていなかった私を、人間らしい、女の子らしい
表情ができる子供にしてくれたんだよ。あなたが教えてくれた魔法でも何でもない
オマジナイの言葉は、いつでも私を豊かにしてくれた。それは百の魔法を覚えるより
私を私でいさせてくれた。
あなたにお礼が言いたかった。あなたに好きと伝えたかった。
でももうそのチャンスは、ないんだよね・・・

私は、姫様の替え玉になるよう訓練された魔法使い。大魔導師ガズー様の弟子ドリィ。
あなたが生きていたら、使命より自分を優先させていたと思う。だけどもうあなたはいない。
だから名乗らない。明かさない。魔法で変えているこの顔の下の素顔を見せることもない。
姫として逃げ、姫として死ぬ。それが私の人生。

地下通路を抜けると小さな泉があり、その傍に軽装の戦士と、老人と言っていい女官がいた。

結局やはりこの二人を残して行ったのか…
私はぐっとため息を堪えて、ふたりに微笑みかけた。

「おふたりに紹介します。彼はエダム。ドラゴンスレイヤーです。」
「え!な、ちっ、ちが…うぐっ」どもるエダムの足を踏んで黙らす。
「普通の槍で、リザードマンを倒せるのはドラゴンスレイヤーだけです。」

「ほう、あんたトカゲ頭を一人でやったのか?そのしょぼい槍で?」
戦士が疑うような目つきでエダムをみる。
「それより姫さんよぉ、あんた、本当に本物だろうな?」
「無礼な。傭兵の分際で姫に馴れ馴れしい口を訊くものではないわ!」横から年老いた女官が
叱咤する。
「ふふん…まぁいいさ、報酬さえもらえればな」

ギーズという名のこの傭兵は油断ならない。隙を見せたらとんでもないことになりそうだ。
私は女官のオルダに顔を向けて目配せをした。
オルダはかすかに頷き、諭すように話し始めた。
「ここからは、いかに注意深く隠密行動が出来るかが鍵です。私たちの目標は、目立たず静かに
エルウィンの森のエルフのもとへ辿り着くことです。それにはこの人数の方がいいのです。
鋼の鎧を着た騎士たちが物々しく姫をお守りしているとすぐに敵に見つかってしまうでしょう。
私たちは、行商している家族に偽装して、旅をするのです。」

…本当は、本物の姫は、ガーディアンの結界魔法に護られて、私たちとは反対方向の砂漠の国
ザンダルクへ逃げる。私たちは出来るだけ敵の注意を引きながら、時間稼ぎをする。
こんな兵卒や傭兵や年老いた女官と本物の姫が逃避行をするわけがない。でもそれを信じさせ
なければいけない。

だからジン。あなたが生きていれば、私は使命を捨ててあなたと逃げていたかもしれない。
わかってる。あなたは仲間を見捨てない。他の二人をおいて私と逃げたりしない。
でもその空想は私を私でいさせてくれる。大切な、大切な私の空想。もう絶対実現しない空想。

よし。
だったら最後の最後まで足掻いてみよう。生き延びられるとは思わないけど、生きてる限り
足掻いてみよう。そしたらガズー様も認めてくれるかも。かあさまと呼ばせてくれるかも。
ジンも褒めてくれるかも。よくやったとキスしてくれるかも。空想では何でもありだ。

「さあ、行きましょう」
なんだか急に少し大人びたエダムが、先頭に立って歩き始めた。
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