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兵卒物語 01)ジン

2011.04.06 16:48|小説 『兵卒物語』
「姫、お怪我はありませんか」 宮廷魔導師のひとりが姫に寄り添う。
「はい、大丈夫です。」 気丈に答える姫だが、明らかに顔色が悪い。
そんなに遠くない場所で、鋼の叩き合う音が響く。煙と、血と、汚物の匂いで頭がくらくらする。敵は、トカゲの化け物みたいな戦士を前線に出してきて、俺ら兵士は3人でヤツ1匹と戦うんだが、こいつが堅い。俺らみたいな一兵卒が、伝説の名剣とか持っているわけもなく、一応銘入りの槍を振るうのだが、浅い傷を負わせるだけで、特に効いているようにも見えない。その内に騎士団が、魔法剣でそのトカゲの首を斬るのだが、まぁ、俺らは騎士団がとどめを刺すまでの時間稼ぎを命懸けでしているわけだ。

それにしても、城のこんな奥深くまで敵を潜入させてしまって、この王国は大丈夫なのか?先の戦いで王と王子が重傷を負われたって聞いたし、もしかしたらもう死んでるって噂も流れ始めてる。

「ジン、もしかしてこれ負け戦じゃない」エダムが小声で言う。
「かもな」ここまで攻め込まれたのは初めてだし、不安が募る。
「王国の翼」と讃えられ12人いた伝説の騎士達も今生きているのは3人だ。
「大丈夫だ!我らにはガズー様がおられる」生真面目なジェイが本心から言う。

確かに、王国の翼の魔導師ガズー様は、海を割って道を造ったとか、千もの敵兵を大雷で炭にしたとか言う類の伝説は百もある。だが今回の敵はそのガズー様の師なんだ。弟子が師匠に勝てるのか。篭絡されているのではないのか。噂は噂をよび、先の戦いに王はガズー様を連れて行かなかった。…そして戦は大敗。9人もの王国の翼を失い、王と王子も…

で今、城に拠って戦っているわけだが、この篭城戦も先行きは暗そうだ。

俺とエダムとジェイは戦争孤児で、城の施設で育った。
戦争孤児は、戦地に行くのは免除されるが、もうこの場所が戦場なんだから仕方がない。武器の扱いや剣術の類は施設で叩き込まれている。

実際俺は死ぬつもりは全くない。まだ17歳だし全然人生を楽しめてない。機をみて逃げようと思ってる。だって死ぬのは怖いし、痛そうだ。

「私の魔力はそれほど残ってはおりませぬ」擦れた声が、魔導師のマントの中で発せられた。
「私は最期の時までここにいます。ガズー」姫の凛とした声。
「魔法で飛ぶと察知されます。地下通路を通って国外へ逃れなさい」
「いやです。ここで皆と戦います」
「お赦しください」魔導師は姫を魔法で眠らせ、騎士に合図し、姫に背をむけた。
そして王の広間の扉を守る俺たちのところに来て、
「お前たちも女王陛下とともに行きなさい」黒マントの奥でガズー様の声が響く。

チャンスだと俺は思った。姫様とこの城の外に出られたら、北の森あたりで不自然でなくはぐれることが出来る。

そう考えている最中、広間の大扉に衝撃が走った。ぐぁつぅん
木でできているこの仕切りを、敵の兵器から守っているのはガズー様の魔法だ。
両手を前にかざし、敵の圧力を跳ね返すようなしぐさで、だが着実に生命を削られていくその様を俺らは真横でただ呆然と見ていた。敵の魔法の圧力がガズー様のフードを後ろへ飛ばした。

「なにをしている!早く女王陛下と共に落ちのびよ」

女の人だ。ガズー様っておばさんだったんだ。思えば今初めてガズー様のお顔を見た。と思っていた。だがすぐ思い出した。フードの下から現れた顔は、3人のよく知っている人だった。

俺らがまだガキの頃、施設に小さな女の子を連れて、お菓子を山ほど持ってきてくれたおばさん。月1回は施設に現れて、その子と俺たちを一緒に遊ばせて、たくさんお話や歌を教えてくれた人。いつの頃からかぱったり来なくなって、3人でたくさん泣いた。その人が目の前にいる。

「なにを してい る お前たち の姫を ま もれ」

あの子は姫だったのか!? そうか…魔法で顔を…

「おいエダム、ジェイ、姫様と一緒にいけ。俺は残る」何してんだ、俺…
「ばかジン!俺たち3人一緒だって」半泣きエダム。
「そうだよ。行くも一緒、残るも一緒」必死で笑おうとしているジェイ。

そんな俺らを脇目に見ていたガズー様が、ふと笑った気がした。次の瞬間、地下通路に転送された。そして入口を魔法で塞いだ。瞬きするくらいの時間だ。だが確かに聞こえた。ガズー様が最後に言った。「あのこを」

呆けていた時間は、数秒だったと思う。いきなりガズー様の結界を突破して地下通路の入口へ進入してきたトカゲ頭が1匹。

さてさて、姫様一行はかなり先に逃げている。
俺らはどうする?

「しゃーないね。俺らは俺らの姫さんを守るかぁ」「だな」「ふむ」

ガズー様。彼女がこの国の陛下だとかあなたの娘だとか、そんなことは関係ない。
俺らは、幼い頃一緒に遊んだ俺らの姫を悪いやつらから遠ざける。
たとえ力及ばなくても。

3人は槍の穂先を重ねて、チンと鳴らした。
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